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zoom RSS 『自転車で東京建築さんぽ』

<<   作成日時 : 2009/09/29 20:30   >>

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都市は建築の宝庫でもある。
都市が通り抜けてきた時間の破片が、
建築という姿でそこかしこに残っている。

平凡社『自転車で東京建築さんぽ 明治・大正・昭和篇』
(小林一郎 寺本敏子著 本文約140p 1800円プラス税)は、
東京に残るそうした建築物を、自転車で巡るのに都合よく
ピックアップしたガイドブックだ。

手にするとすぐに出かけたくなってくるが、
残念ながら私は静岡在住なので、今日明日というわけにはいかない。
しかし、あの辺りにこういうものがあったのかと驚くばかりである。

地図はなかなかよく出来ているようだ。
コースは地図上では指定せず、対象の建築物をプロットしてあるだけなのが、
むしろ私などには好ましい。
周囲の情報ももちろん入っているから、
建築に限らず、自分の見たいものを探すのにも都合がいいだろう。

ページを繰ると、私などは戦前の建物にぐっと引き込まれる。
ほとんどがカラーページなので、建築物の感じもよくわかる。
太平洋戦争前の昭和史を彩るような建物も散見され、
最近その頃の文献を読むことの多い私にはきわめて興味深いのだ。
それらの建物は空襲を生き延びて現在に至っている。

少々残念なのは本文の文字がやや強いのと、
使用されたであろう自転車に関する記述がないことなのだが、
このガイドブックの主役はあくまでも建築物という考え方なのであろう。

いずれにしても、こういう「都市の遺産」をこつこつと訪ねるには
自転車が格好の道具であることは間違いない。
あまり上のほうばかり見ていないで路面にも注意することが必要だけど。

星空には、100光年、1000光年、それ以上の先から届いた光とともに、
数十分前に外惑星を出た光が混在している。
違う時間が、空間のなかで一体化している。

同じように、都市のなかには過去の異なる時間相の構造物が混在しているのだ。
断片的ではあるが、この本にはさまざまな建築物に付随するそうした位相が
掬い上げられているように私は思う。

とりわけ賛同したくなるのは、いかめしい省庁系の建物や会館ばかりでなく、
街角の無名の酒屋さんまで取り上げられていることだ。
こういう視点こそ、自転車的であるね。

また東京タワー上部の鋼材がどんなものから得られているか、
というようなトリビア的情報も面白い。
そこにも、時代の刻印が読めるのだ。

アーチの種類や、レンガの積み方の種別など、
建築の基礎的知識がわかりやすく解説されているページもある。
建築の専門家でなくても愉しめるし、この本を読むことで
「こういうのをイギリス積みって言うんだよ」というように
多少の解説ができるようになるかもしれない(^^)。

都市の現在は、過去の時間が遺してきたものの上に成り立っている。
都市の表面だけではなく、その内側の物語を読む。
この本には、そのためのヒントがいっぱいつまっている。



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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
時間の中を散歩するわけですね。
たぬきさん
2009/10/01 16:31
京都もじっくり走ってみたいですわい。
白鳥和也
2009/10/01 22:03
自転車の七つの旅
の 津軽から秋田へ

よかったです どっぷり浸ってきました

今 戻ってきたという感じです

小説の面白さがわかったような気がしました
さて 次はどの旅読もうかな
アルキメデス
2009/10/03 11:37
走れなかった自転車の旅もよかったです

何度も繰り返し読みたい本になりました

ありがとうございました
アルキメデス
2009/10/03 18:13
アルキメデスさん、こちらこそ
過分のお言葉をありがとうございます。
深く感謝申し上げます。
あちこち走りますと、その道やその土地に
何度訪れても飽きないような魅力が
見つかったりします。
日本もまだまだ広いですね。
白鳥和也
2009/10/03 20:35
旅行ではなく旅をするには自転車が一番ですよね。自転車で旅してみたいところは星の数ほどあります。とても生きている間に全てを周るのは無理ですな♪
たぬきさん
2009/10/11 18:48
愉しみが尽きないほうが良いですからね(^^)。
白鳥和也
2009/10/12 00:28
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